天文学ってロケットを打ち上げてるんですか?
天文学者が何をしているのか?
「天文学を勉強されているんですね。ロケットを打ち上げているんですか?」
自己紹介をすると、よくこう尋ねられます。 ありがたいことに、私の研究分野が天文学であると話すと、興味を持っていただけることが多いです。 その中でよく受けるこの質問ですが、残念ながら答えは「NO」です。 天文学は、ロケットを設計したり打ち上げたりする学問ではありません。
では天文学者は実際にはどのようなことをしているかというと、
- 天体の観測:お星さまを始めとする、宇宙に浮かぶあらゆるものが研究の対象になり得ます
- 宇宙の謎を解く:観測をもとに、数式も用いて「なぜ宇宙はこのようになっているのか」を考えます
- 望遠鏡の開発:ロケットはつくりませんが、観測のための「目」となる装置は自分たちでつくります
これはかなり単純化した説明なのですが、天文学者の仕事はこのように概説できます。
ちなみに、ロケットなどの大掛かりな装置は、工学系の企業が設計や建造を行います。 彼らの持つノウハウがフルに活かされ、天文学者のニーズに合う装置が造られます。
カルチャー・ショック
幼少期より宇宙に興味があった私にとって「天文学は宇宙について調べる学問である」という認識は当然のものでした。 しかし、先に挙げたような質問をよくしていただくようになり、世間ではそのような認識が一般的ではないことを理解するようになりました。
私にとってこれらの体験は「カルチャー・ショック」でした。 自身の専門分野にいると、そこでの常識が世間でも常識のように誤認してしまう ということはありがちです。 あるいは、専門外の人に対してうっかり専門用語を使ってしまうということもよくあります。 そういった認識の乖離には気をつけたいですが、なかなか難しいものだと感じています。
しかし、こういった認識の乖離は悪いことではないと思います。 むしろ、全てのことに対して認識のすり合わせを行うのは不可能です。 大事なのは、その乖離が発生しているときに「カルチャー・ショック」を受けられる態勢を整えることなのではないかと考えております。 受け入れる必要はないのだと思います。 自分がいるのとは異なるフィールドではこれほどまでに常識が異なるのだということを、そのときに知るだけでも良いと思われるのです。